見まごう邪馬台国

◇うんざり

「北部九州だ。いや、畿内の大和だ」と云う思い込み的で論理性に欠けた位置論争には、うんざりだ。平成21年、奈良県桜井市箸中の箸墓古墳周辺部から発掘されていた遺物の研究や炭素14年代測定法に拠り、その築造年代が、AD240~260年頃とされた。市教委の発表に拠れば、その結果を受けて邪馬台国女王卑弥呼を被葬者とする可能性が高いとする。呆れた事に、古代史学界でも卑彌呼の墓で略間違いないと、当時、この列島には邪馬壹(邪馬臺)国以外に権力構造を有した国々や人々が存在していなかったのかと、見まごうばかりに、マニアのみならず、NHKや新聞等のマスコミ各社も大騒ぎした。その後、検証作業が続くのか、測定方法等、何らかの問題でもあったのか、鳴りをひそめ、最近は話題にならない。
また、邪馬臺国を近畿の大和と比定してだろうが、吉備地方に倭国王が居て、卑弥呼の故郷だったのでは?等とする説までもが在ると云う。確かに、こうした説の何れもが可能性ゼロとは云えないし、様々な知見を積み重ねて想像し、推測する事も必要だろう。だが、その論拠たるや、従前から巫女と思しき皇女の墓とされた古墳の築造年代が合致する事、吉備地方には王権があったと思しき遺跡が多く、被葬者を倭国王帥升と推定される特異な盾築墳丘墓等の大型古墳の発祥地とする等、比定地も確定しない中、あやふやで不確かな状況証拠と思うのは私だけか。
晋代の文官陳寿に拠る「魏志東夷伝倭人条」に記載される邪馬壹(邪馬臺)国への里程には矛盾?があり、様々な説が唱えられた。例えば、記述に順って進むのではなく或る地点から放射状に進む。この場合、末盧国・伊都国・不彌国等を基点にする諸説がある。更には邪馬壹国へは不彌国から南へ「水行十日」と「陸行一月」の日程で至るとすれば、九州管内を出るので、そのどちらかだとする説、更には、禁じ手とも思しき「南至」を東至の間違いとして女王の都を大和とする等、比定地が確定しない理由の一つは、当時の陸行や水行の方法、その里程の換算距離がハッキリしていない事だけではなく、冒頭で「郡至倭~国邑為す」とした後、女王国領域に至った後、「郡至女王国~」、傍国との位置関係を「女王国以北~」等、「倭の国邑」とはされない事、「従~至」「自~至」と書き分けられる等、当時の筆法もあったのだろうが、全てに編者陳寿の思惑や意図が在った。こうした様々な筆法に拠る書き分けを考慮せずに読み解けようはずもない。もう一つ、1~3世紀に架けて列島の状況を漢籍に頼る以外に方法を見いだせない中、「古事記」「日本書紀」等の国史が語る神話の本旨も読み解けず、欠史八代として見向きもされない天皇を創造した夫々の編者が持つ思惑や意図も理解しようともせず、国名と所在地を特定する事はおろか、官名と職制や、その国状を理解するには無理がある。
私見で、当時、列島内で使われた言葉、特に邪馬壹(邪馬臺)国の支配組織で用いられた言語形態や、その音韻体系がどんなものだったか分からないにも拘わらず、万葉仮名に於て同音の仮名に多様な音韻の漢字が使用されるのと同様、魏志東夷伝に使用される漢字が持つ当時の音韻を殆ど無視、現代日本語の漢字音を用いて国名や官名を訓み、漢字の語義や解字等を考慮しない事が、こうした状況を生んだ第一の理由だと思う。
此処では、場所を云々し、比定する前に使われる漢字の音韻や語義を鑑み、「三国志」の編者陳寿が晋王等の読者に対して伝えたかった事を読み解き、真意を探って見たい。その糸口として「魏志東夷伝」に見られる異表記や問題になる表記等、論点にもされない小さな疑問点を一つ一つ取り上げて、一考察として私論を述べてみたい。先ずは、避けて通れない最大関心事である邪馬台国の位置を決定するために重要な問題とされる距離の換算に対する論考から始める。尚、文中の丸数字は補注として文末に掲載する(以下同)。
 
箸墓古墳奈良県桜井市箸中にある最古の前方後円墳の一つ。墳長約280m。後円部の直径約160m。葺石や最古の埴輪があり、3世紀半から後半の築造とされる。「崇神紀」倭迹迹日百襲姫命の墓と伝承されるが、近年、卑弥呼の墓とする説もある。
国立歴史民俗博物館名誉教授の春成秀爾氏は吉備地方を卑彌呼の出身地とする。また、岡山大の松木武彦教授は様々な情況証拠を提示して倉敷市の盾築墳丘墓の被葬者を倭国王帥升という人物の可能性を提唱する。

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  1. 2014/06/03(火) 13:36:55|
  2. 1.距離の感覚
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