見まごう邪馬台国

◇伐(ボル)

 >(7)坪(Por)は、古代において「伐」の字が用いられ、三韓では「城」と同じ意味に使用されていた。その他、夫里・卑里・不離・巴利・頗利等の字も充てられた。

 三韓時代、「坪(ポル)→伐」は「城」と同じ意味に使用されたあり、佐賀県と福岡県境に聳える背振(せふり)山系北尾根の雷山の朝鮮式山城とされる神籠石があり、「夫里(フリ)」と関係が在るのかも知れません。但し、「魏志韓伝」~卑離国と云う国名が幾つか見え、散在山海間無城郭としますので、「城」ととするには疑問があります。

 馬韓在西。其民土著種植、知蠶桑作綿布。各有長帥、大者自名爲臣智、其次爲邑借。散在山海間無城郭。有爰襄國、牟水國、桑外國、小石索國、大石索國、優休牟涿國、臣濆沽國、伯濟國、速盧不斯國、日華國、古誕者國、古離國、怒藍國、月支國、咨離牟盧國、素謂乾國、古爰國、莫盧國卑離國、占離卑國、臣釁國、支侵國、狗盧國、卑彌國、監奚卑離國、古蒲國、致利鞠國、冉路國、兒林國、駟盧國、内卑離國、感奚國、萬盧國、辟卑離國、臼斯烏旦國、一離國、不彌國、支半國、狗素國、捷盧國、牟盧卑離國、臣蘇塗國、莫盧國、古臘國、臨素半國、臣雲新國、如來卑離國、楚山塗卑離國、一難國、狗奚國、不雲國、不斯濆邪國、爰池國、乾馬國、楚離國、凡五十餘國。大國萬餘家、小國數千家、總十餘萬戸。

 先掲の言葉と「卑離」が漢字音に拠る訓音として、「漢和大辞典」に拠ると、以下の如く何れもP系とL系音で、これを片仮名書きすると、近似音ですが同音にはなりません。次いで、夫々を日本語に照らし併せると以下の如くなります。

  夫[pıuag(pıuo)][pıu]・里[lıәg][lıei][li]=ピゥァッ(ピゥォ)・リァェッ→プァ(プォ)ラェ→パ(ポ)レ
  卑[pieg][piē][pi]・里[lıәg][lıei][li]=ピェッ・リァェッ→ペレ
  不[pıuәg][pıәu][fәu]・離[lıar][lıe][li]=ピゥァッ・リァゥ→プァッラゥ→パル
  巴[păg][pă][pa]・利[lıed][lıi][li]=パ・リェッ→パレ
  頗[p`uar][p`ur][p`o]・利[lıed][lıi][li]=プァゥ・リェッ→パゥレ→プレ

○夫里(パラ/ポラ)=原(はら)/洞(ほら)、区画整理された耕作地(里)を持ち、「はら=腹」と同源の平野。
 後者の「ホラ」=掘ると同源の口を開けた奥まった所=谷間で、出入口を持つ洞・岫(くき)とは地形的に違う。
○卑里(ピェラ→ペラ)=箆→平(へら→ひら *たい)、これも区画整理された耕作地(里)を持つ平野。
巴利(パレ)=張・墾・治(はれ→はり→へり)で、河川が運ぶ土砂が堆積し、開けた扇状地等を治水工事で開墾した先端=縁(へり)。
○不離(パル)=原・春・張・茨(ぱら→ばり)は、巴利(パレ)と同形ですが、瓦礫の拡がる荒れ地か、ゲル(天幕)が散在する草原。
○頗利(プレ)=触・村(ふれ)等、長崎県の壱岐の~触(ふれ)と同形語か。

 「卑」=平たい柄杓を持つ形象、酒を注ぐ事から使役の意味を持ち、引いては卑賤の義とある。「夫」と「卑」は地形的な状況以外にも生業の違いを示唆、大夫(たゆう)、小作人や被差別民等の違いかも知れません。
 卑[pieg][piē][pi]・離[lıar][lıe][li]( ピェッ・リァゥ→ペラゥ→ペル)は馬韓域の中央部から離れた賤しい僻地(縁=へり)、不離(はる)国は中央に隣接する土地で、何れも耕作地の有無は定かではありません。また、頗(=すこぶる)・利(=収穫)国(プレ)は鉱物や鍛冶等、優れた利益を生む土地と考えます。
 「魏志倭人伝」道程の国々には官卑狗・副卑奴母離と在り、傍国巴利国等にも官吏や武官が派遣され、物見台を設けた役所等が在った。上記の何れもが城郭はないが、環濠や柵壁を廻らせた集落自体が「城」とされたのでしょう。

背振(せふり→そふり)山=韓国の首都「京城(セォウル)」かと云われるが、玄界灘側の尾根「雷山」と有明海側の尾根「帯隈山」には百済式山城と云う説もある神籠石が在り、城のある背後の山と云う意味の名称と考える。

莫盧國=同国名が二つあり、邪馬壹国への道程「奴国」、傍国「奴国」と同様、国々の位置関係を示唆する。また、不彌国は、その道程の不彌(はみ)国と同音で、二者は何らかの関係があるのでしょう。伊都国との中間に位置する佐賀県多久市別府(仁位所)、長崎県下県郡豊玉町仁位(対馬)、他にも福井県足羽郡美山町仁位、兵庫県佐用郡上月町仁位、山形県山形市二位田、新井田、仁井田、二位田等、東日本に多い。半島にもよく似た地名があるのかも知れない。また、卑彌(ぴめ)国は、女王卑彌呼の「卑彌」と同音が使われるので、「秘め」「姫・媛」等、司る役目等の関係性が在ると思われる。
 莫[mag/mak][mo(mbo)/mak(mbak)][mu/mo]廬[hlag(hlo)][lo][lu]とあり、漢字音を併せると、「マッゥロッ→マロ→マル」、地名接尾語の「~丸」に近い音になる。~丸(まる)=Mar(マル→マル)=丸とMor(モル→モル)=守(もる)は、環濠集落の人々の集落を指す言葉、Mori(モリ)とMouri(モゥリ)=杜・森等は、狩猟採集民の集落を指す言葉だったかとした。莫(草むらに日が隠れる)、廬(火桶・火入れ・黒い、柳で作る飯櫃)とあり、生活習慣の違う蒙昧で言葉の通じない国と云う意味かも知れない。

洞(ほら)=滋賀県伊香郡高月町洞戸(ほらど)、京都府京都市右京区北嵯峨洞ノ内町(ほらのうち)町、兵庫県三田市洞(ほら)、和歌山県日高郡印南町上洞(かぼら)、鳥取県鳥取市洞谷(ほらだに)、高知県高知市洞ケ島(ほらがしま)町、熊本県下益城郡砥用町洞岳(ほらおか)、沖縄県宮古郡城辺町保良(ぼら)等、何れも谷間や、なだらかな盆地にある。

平(へら→ひら)=滋賀県高島郡朽木村平良(へら)、兵庫県豊岡市戸牧(とべら)、同県氷上郡市島町戸平(とべら)、和歌山県東牟婁郡古座川町南平(なべら)、広島県廿日市市平良(へら)、同県廿日市市平良(へら)、大分県宇佐郡院内町景平(かげへら)や、現在、全国的に見られる平野(ひらの)・平田(ひらた)・平井(ひらい)等も同源か。

たい=東北地方等に多い、小高い台地や高原。岩手県の八幡平(はちまんたい)等。現在、台(だい)や岱(たい)等も使われる。尚、邪馬臺国に使われる「臺(うてな)=台」=四方を観望できるように作った高い土壇・建物。高殿。物を載せる台 。平たくて高い土地。物事の基となるもの。中央政府の官省、弾正台等。皇族・貴人等への敬語。

張・墾・治(はり)=三重県名張(なばり)市・同県桑名市播磨(はりま)・同県志摩郡浜島町南張(なんばり)、滋賀県守山市播磨田(はりまた)町・同県栗太郡栗東町荒張(あらはり)・同県甲賀郡甲西町針(はり)・同県伊香郡余呉町針川(はりかわ)・同県高島郡新旭町針江(はりえ)、京都府京都市北区西賀茂榿ノ木(はりのき)町・同市上京区針屋(はりや)町・同府京都市南区西九条針(はり)小路町・同府中郡峰山町新治(にんはり)、大阪府大阪市阿倍野区播磨(はりま)町・同府大阪市東住吉区針(はり)中野、兵庫県神戸市中央区播磨(はりま)町・同県加古郡播磨(はりま)町、奈良県桜井市針道(はりみち)・同県山辺郡都祁村針(はり)、岡山県児島郡灘崎町川張(かわはり)、広島県広島市安佐北区安佐町鈴張(すずはり)・同県世羅郡世羅町戸張(とばり)、徳島県阿南市畭(はり)町・同県阿波郡市場町尾開(おばり)、同県阿波郡阿波町新開(にいばり)、同県麻植郡山川町榛木原(はりきばる)、同県美馬郡木屋平村南張(なんばり)、愛媛県松山市針田(はりた)町、同県今治(いまはり)市、同県北宇和郡津島町針木(はりき)、高知県高知市針木(はりき)、同県高知市針原(はりはら)、福岡県筑紫野市針摺(はりずり)、長崎県佐世保市針尾(はりお)、鹿児島大口市針持(はりもち)

巴利国=巴[păg][pă][pa](字統)器の把手の形。「説文」蟲なり、象を食う蛇なりとし、字を蛇形に解す。邑[・ıәp][ıәp][iәi](字統)囗(国構・イ)=城壁を巡らせた所と巴(多くの人が生活する)とある。利[lıed][lıi][li](字統)禾と刀、「金文」犂鋤や犂の形で見える。禾稲を刈り、収益を得る事=利益。
 尚、「倭人伝」傍国「為吾国」は象(ぞう)を使役する事に関連し、為吾国人が水田等の水利や土木工事を掌るための労働力を供す国か。見まごう邪馬台国の次章「傍国考」で詳述するが、巴利(へり)国を佐賀県北松浦郡(平戸市)田平町付近に比定した。
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