見まごう邪馬台国

◇異民族の単位

当時の魏使や郡使等の持つ方向性や距離の感覚を疑ってはいけない。中国国内の移動でも、未だ正確な地図は無かったと思われるので、それこそ相対的な距離と八方位で描かれた簡単な地図で、太陽や星の位置と山河等の地形を目安にして移動したであろう事は想像に難くない。詰まり、命を賭して、特に道らしきものもない砂漠を横断し、山脈の峠道を行く商民、海洋を航海する海民にとり、距離感が狂ったり、方向性を欠けば、宿場のあるオアシスや城壁に囲まれた都市には容易に辿り着けなかった。そんな無謀な事はあり得ないと考える。
漢籍の史書等に記載される里数は9割以上の確率で実地に合致すると云われる。先掲の一覧表には長里と云う名称すら見えないので、歴代の王朝で用いられた度量衡の単位に短里はないとして良いのだが、「倭人伝」の里程に於て様々な矛盾が生じると云う事も否めないのは確か。
例えば、晋代の陳寿が編纂した「三国志」の里数記事150件中、三割の50が、AD220~250年迄の魏志と呉志だけに、長里ではなく80m弱の極短い里数が使われると云う論者が居り、それも249年の高平陵事件を契機に魏帝曹氏から丞相司馬懿に権力が移る迄の限定された期間と云う。この論者は、蜀志以外で使われる理由を、この時期、呉が魏の支配下だったからとするが、この期間にだけに集中して使われる理由は未だ判らないと云う。ただ、249年に起きた高平陵事件を契機に曹氏から権臣司馬懿(179~251)に権力が移った事と関連が在るのではないかとする。
晋帝の命で魏帝位を簒奪したのではなく禅譲されたと正当化するために書かれた「三国志」で、司馬懿に実権が移ったとされる事件が起こる迄の期間に集中して短里と思しき単位が現出するのであれば、何らかの理由が在ったとせざるを得ず、現状の距離数を鑑み、割り出される短い里単位、特殊な単位の存在は否定できないと思う。例えば、帯方郡衙(現ソウルか、平壌付近)から狗邪韓国を通説の釜山付近として、地図上、その直線距離をディバイダで計ると総距離七千余里は、約600~700㎞、同様に、釜山から対馬間は約70~90㎞、次の対馬~壱岐間は約60~70㎞、次の壱岐~唐津市付近迄は約40~50㎞、その停泊地に拠る違いや海流や潮汐の影響等を考慮し、孤を描きながらの航行だとしても、一里=約434mでは、前者の七千餘里=約3100㎞、後者の三区間千餘里=約440㎞となり、現状の直線距離に比して凡そ5~10倍と云う膨大な数値となる。これは相対的な単位等と云う次元の問題ではない。詰まり、100m前後とされる短里でなければ、現状の何れとも適合しない。これに対して短里は無いとする研究者や論者は、防衛上、長く見せたかった。中国人の白髪三千丈的な記述等として理由にもならない非論理的な説明で誤魔化す。
こうした事を考える理由は、漢民族が膨大な労力と時間を割き、長城を築いて、その進入を防いだと云う北方の異民族にも前漢高祖「劉邦」や後漢光武帝「劉秀」と同姓氏を持つ匈奴「劉顕」等が居り、遊牧民や騎馬民とされる彼等が用いた度量衡の基本(手足の長さ等)は何だったのかと云う思いを持つからだ。帯方郡の比定地を通説の現・平壌か、ソウル付近として、その書き出しの文意を帯方郡衙から朝鮮半島西岸を彼方此方に碇泊しながら南下、韓国を歴て西南隅から東へ水行して到った狗邪韓国の所在地を半島東南隅、総距離を七千餘里として話を進める。尚、歴韓国乍南乍東~と云う記述から韓国西沿岸の或る所から上陸し、韓国領内を東南方向へ陸行したとする論者もいるが、これに就いては後述する。
 
司馬懿=三国「魏」の権臣。字は仲達。魏の諸帝に仕え、蜀漢の諸葛亮(孔明)と戦い、大陸の東北部と朝鮮に領土を広げて、魏末丞相となって実権を握った。孫の司馬炎(武帝)が晋を建て、追尊して高祖宣帝と称される。晋(しん)=三国の魏に代わって、その権臣司馬炎(司馬懿孫)が建てた王朝(265~420)。都は洛陽。280年呉を滅ぼして天下を統一。後、五胡の乱に拠り、316年に4世で滅亡(西晋)。翌年、皇族司馬睿(元帝)が建康(南京)に再興したが、混乱がつづき、遂に将軍劉裕に滅ぼされた(東晋)。司馬遷=前漢の歴史家。字は子長。陝西省夏陽の人。武帝の時、父・談の職を継いで太史令となり、自ら太史公と称す。「李陵」が匈奴に降ったのを弁護、宮刑に処せらて発憤したと伝え、父の志を次いで「史記」130巻を完成した(前145頃~前86頃)。
帯方郡衙=通説的には現韓国の首都ソウル付近、現北朝鮮の首都平壌とされる。後述するが、「三国志東夷伝」韓国は方可四千里と狗邪韓国迄の七千余里から現忠清南道公州以南を韓国領域とした。また、その西北側を帯方郡領域、その東側は(東)濊領域とした。

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  1. 2014/06/09(月) 14:15:16|
  2. 1.距離の感覚
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