見まごう邪馬台国

◇英語の文型

 国語学界の研究発表は、以下の如く続きます。【他に「古川ロッパ昭和日記/戦前篇・戦中篇(晶文社)」の昭和10年代分を対象に個人における「全然」の 使用実態を調査した結果を併せ、昭和10年代の段階では、本来、否定を伴うと云う規範意識は、未だ、発生しておらず、使用実態も昭和20年代後半以降に広がる迷信を生み出す様なものではなかったと研究班は結論づけました。】

 昭和20年代後半以降に広まる迷信を生み出す様な使用実態が昭和10年代にはな かったとすれば、尚のこと、迷信が起こり、影響された大きな理由や原因があって然る可きだと思います。先述した様に語義からしますと、否定を伴うとする理由はありませんが、戦前戦中の国家的重要課題を念頭に置いた「標準語」「正しい日本語」をめぐる議論が盛んに行われた事の反発からか、明治期に流入した英語や、敗戦後の英語教育に使われる教科書の作成仮定に於いて、英語文法等にも影響を受けたとも考えられます。例えば、英語でも、at all / in the least 等、通常、否定(not)を伴って使われる副詞が在り、これらの使い方に影響されたとすれば、「全然、~ない」も、こうした英単語や熟語と同様のニュアン スを持つと考えられます。
 そこで下記の如き例文を使って比較してみましょう。

  A I can not understand it at all → 私には迚も理解できない。
  B I do not want it in the least → 私はちっとも欲しくない。

  何れの文章も背景には貴方や第三者と違う=他者との比較→(5)2つ以上の事物の差異を表す。難易・良悪・過不足→(7)マイナスの価値評価を表すのと同 様のニュアンスがあり、Aの場合、全然、解らない。Bの場合、全然、欲しくないとできます。尚、或る新聞記事には、辞書の世界では新しい変化も出てきてい ます。三省堂の大辞林第3版(2006)は諸研究を反映したのでしょうか。旧版にはなかった明治・大正期には「全て」「すっかり」の意で肯定表現にも用いられていたが、次第に打ち消しを伴う用法が強く意識される様になったという記述が追加されていますとあります。

 言語自体、時代を反映し、規範や語法、発音は変化変容します。例えば、戦前戦中、野球用語「ストライク」は敵性語として「良し」とされた。例えば、全然、良し(ストライク)=明白な良し(ストライク)→紛れもない良し(ストライク)と、比較して差違を表すので否定を伴う文章にできます。
 本来、「全然」には何かと比較する(完⇔欠)と云うニュアンスが在り、「全然、良い」の発言者や応答者は、その意識下で対照的な良くない状態や状況と比 較する。全然、良い=疑いなく良い=全然、問題ないは、それが差違や欠落等のマイナスの状態や状況、同等でないと云う感覚を生み、全然、~ないと否定を伴うと云う規範に派生したのでしょう。先の英語法との関連から推測すると、昭和20年後半、著名な学者や作家等が対談や文章中で、全然、~ないと否定を伴う 事が望ましい等と語ったり、その記事が契機となり、規範として認識され、国語教育に組み込まれたため、それに法ってきた人々には違和感を持つのは当然の事ですが、現在、そうした規範が持つ縛りが薄れたと考えます。
 但し、全然、大丈夫です→全然、問題ないですは、前後の脈絡に拠っては、少し、ニュアンスに違いが生じます。前者は「全然」が持つ比較すると云うニュア ンスから応対者は「本当に大丈夫か?」等、何となく、その疑いや不安感を拭えない。後者の場合、応対者は同様に一寸した疑いを持つが、心配ないと断言され た様に感じ、安心感を持つ。ただ、そうした不安感等、意外な感じを持たせるとすれば、良いのかも知れない。

迷 信=研究発表は、今後の課題は迷信が戦後のいつの頃、どのように発生し、浸透していったのかを解明する事とします。或る新聞の読者投稿欄に子供向けテレビ 番組で使っていた「全然、大丈夫」というフレーズは誤用であり、日本語の乱れだと断言する内容でした。専門家の研究が着実に進みつつあるものの、こうした 投稿が新聞に大きく掲載される現実は“迷信”が、まだまだ、一般に根強く浸透している事が窺える。
「全て」「すっかり」=本来、「全く以て然り」と状態や状況のままと云う語義で、 強調として使われていたが、それが「全く」「全て」「すっかり」と云う語義にも派生したと考える。尚、学界で認められた規範や語法の変容、発音の変化を辞 書は後追いで記載する。英語でも同様の変化や変容がある。そうした使い方を誤用とする前に、これらが持つニュアンスの違いを云々すべきだ。
規範=音楽の和声学とは使ってはいけないのではなく、なるべく使わない方が良いと云う程度で、逸脱する事で意外な効果(緊張等)を表現できる。同様に言語の規範や語法も規範として確立しているのであれば、則した方が真意は伝わり易いが、逸脱する事で意外な効果を生む。
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