見まごう邪馬台国

◇魏帝の思惑

 『「邪馬台国」はなかった』の著者古田武彦氏は、郡至倭海岸水行~韓国と、下記、「魏志」の記述から魏帝の威厳を示すために韓国領内を狗邪韓国迄を対角線上に陸行したとする。何れにしても半島南東部に向かった事に違いはないが。

  (1)八月、帝、遂に舟帥を以て、譙より(自)渦にいて淮に入り、陸道にい徐に幸す。
  (2)遂に歩従して卞水(べんすい)に到る。水深くして渡りえず、洪、水にいて船を得る。
  (3)太祖、白馬を祓いて還り、輜重(しちょう)を遣わし、河にいて西せしむ。

 上記の三つは順に以下の如く理解する。(1)陸行以外に方法が無かった等の理由で、淮から陸道で徐に幸す。(2)歩いて到った卞水の流れが深かったので 川縁で船を得た。(3)何らかの理由で太祖は陸道を安全祈願した白馬に乗って還り、代わりに輜重に水行か、河川沿道を陸行させた。
 何れの場合も水行(乗船)と陸行(徒歩・乗馬等)と判る示唆があり、況んや、「循」や「従」とするが、「歴」はない。これをして「倭人伝」の記述を韓国からは陸行したとできる理由が解らない。
 例えば、天皇皇后両陛下は慰霊の為に南太平洋の島々に至られ、激戦地を歴訪されたとした場合、今ならば、飛行機だろうが、一昔前は、船旅で島々を巡っ た。詰まり、歴韓国乍南乍東~陸行~とされない限り、「循」=順う・巡る、「歴」=転々と彼方此方にと云う漢字の語義に拠り、直線的な二点間の動きを表す 「経」に対し、暦と同源「歴」は転々とした動きで、文脈的には帯方郡からリアス式海岸に循じて水行、彼方此方に碇泊しながら韓国を歴て南下、西南隅から東へ向かう。これが南西方向にへ行ったならば、「歴韓国乍南乍西」にされたと考える。更に、「東南陸行五百里到伊都國」から末盧国で上陸した事が判り、その後も水行とされないので陸行となる。
 もう一つ、循海岸水行韓国乍南乍東其 北岸狗邪韓国~に使われる「従~至」と「歴~到」の関係に拠り、韓国からの水行とは別ルートの陸行で狗邪韓国に到ったとしたり、朝鮮半島西海岸は暗礁等が 多く危険だったから陸上を通ったとする研究者や論者も居るが、当時、韓国領の馬韓・弁韓・辰韓は帶方郡に服属を強いられていたが、反対勢力は居なかったと は考えられず、魏帝の命を受けた魏使は勅書と金印等の下賜品を間違いなく女王卑彌呼に届けるため、最も安全で迅速な方法を用いたと思う。詰まり、そうした 水道を安全に航行する知識や技術を持った沿岸航海民だからこそ、その存在意義があった。例えば、九州東北部の玄界灘沿岸部も暗礁が多いので、宗像海人族の 水先案内でなければ危険だったと云われる。帯方郡は、そうした彼等を服属させていたからこそ韓国も支配できたと考える。
 河川航行や沿岸航海、外洋航海に従事する蛋民や海民が持つ能力は為政者にとって重要で、彼等を支配服属させる事は国力を充実させる重要な手段となる。当 時、魏帝にとって外洋航海民倭人を取り込み、繋がりを持つ事は戦略的にも大きな収穫だった。それが故、その支配権を認め、法外な返礼品で以て魏使を派遣し たと考えられる。領海と云う言葉が在ったかどうかは別として国域や領域とは陸地だけではないと知るべし。
 述べてきた理由で、何れも可能性は低いと思う。(A)を意訳すると下記の如くなる。尚、赤字は意訳部分とする(以下同)。

 帶方郡衙から半島西沿岸を(郡に服属する沿岸航海民の水道に)循じて水行、韓国を歴て(南西隅から南沿岸を)東へ水行し、(外洋船に乗り換えるための寄港地)倭人の領域北岸の狗邪韓国に到る。(郡衙から此処迄)七千余里。

半島東南部=「東南陸行」を「道標」等と称し、伊都國を博多付近としたいためか、歩き始めの方向と云う。こうなると邪馬壹国への道程や行程を述べる陳寿の意図ではなく、著者古田氏の意図や思惑になる。
渦=渦水、河南省通許県を源とし、安徽省で淮水に注ぐ。目まぐるしい動きのある所の意で、急流だったか、渦を生じるのかも知れない。
暦=太陰暦(陰暦→旧暦)で、新月~満月~新月と月の形状が日毎(約29.5日)に変化する事を基本として作られたもの。日本では明治初期迄、農事暦との関りからか、太陽暦=太陽と地球のとの関係をも含み持たせた旧暦(太陽太陰暦)が使われた。
循=循環器に使われる様に、血管等、決まった経路に従い移動する事を意味するので、沿岸の水道を使って航海したと考える。



 
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  1. 2015/08/20(木) 15:45:39|
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